躍動する「人文学類」

人文科学は「静」と「動」

人文学類は旧文学部を前身とし、2008年の学域・学類制への移行に伴って発足しました。
 人文学類の特色はまず学生の卒業後の進路にあらわれています。大雑把に言って、法学類は公務と民間企業の比率が2:1、経済学類はちょうどその逆という状況ですが、人文学類は両者の中間です。過去三年の平均では、公務(教員・独立行政法人を加えます)4割、民間5割弱、また大学院進学者が1割以上いることも特色です。詳細は「卒業後の進路」をご覧ください。

人文学類は人文科学の多くの領域をカバーしており、5コース・15分野から成っています。それらはいくつかの基準で分類できます。例えば、高校で触れたことがあるかどうか?15分野のうちの半数くらいは、皆さんになじみのある分野でしょう。次に、「動」と「静」という基準を立ててみます。人文学類の各分野に共通する基礎要件は読書です。特に文献を対象とする分野では外国語読解能力を含めて読書は不可欠です。これを「静」と呼びます。しかし「静」=デスクワークと捉えるのは誤解で、ネットのどこを探しても出てこない資料を探すために図書館の書庫を探し回るという動的労働が必要なこともあります。文字化されない真実を求めて各地(海外を含む)に出かけるフィールドワークや社会調査は、まさしく「動」です。また自然科学に近い実験的手法を必要とする分野もあります。これも「動」です。「動」と「静」のどちらに向くかは個人の気質に因ると思います。私自身は、中国語学・中国文学という分野に属していますが、ベースはフィールドワークと実験です。

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「しっかりと考えることができる」人材になる

最後に些か脱線しますが、「世の中の役に立つか立たないか」という基準を立ててみます。東日本大震災の後、人文系の学者から「人文科学は自然災害の前にあまりにも無力である」という声が聞かれました。しかし私は賛成しません。逆に、現代日本社会には自然科学に対する過大な期待があると感じています。自然科学では予測が求められることがありますが、それが容易でないことは科学者自身がよく認識しています。未来予測はできない。人文科学が対象とするのは、主に過去の出来事です。研究の結論は推論にすぎません。しかし、実は人文科学の研究と推論は自然科学よりも複雑なプロセスを必要としています。複雑化するのは対象が人間という得体のしれない存在であるためです。このような一見役に立たない勉強を経て育つのは、物事を「しっかりと考えることができる」人材だと思います。しっかり思考のできる若者は社会のどこに出ても活躍できると信じています。

金沢大学 人文学類長
岩田 礼

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