人間科学コース Human Sciences

三浦 要 (MIURA Kaname) 教授

[研究領域] 古代ギリシア哲学
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私の研究領域は古代ギリシア哲学ですが、その中でも特にソクラテス以前の初期ギリシア哲学を研究しています。一般に紀元前6世紀のタレスが創始者とされる西洋哲学は、すでに2500年以上の歴史を持っています。そして、この哲学という知的営みの誕生はしばしば「神話から理性へ」という図式で捉えられ、神話的思考形式からの離脱を宣言するものと解されています。つまり、最初に万有についての合理的で普遍的な知を求めたのがタレスを始めとするソクラテス以前の哲学者たちということになるわけです。そうした最初期の彼らの哲学の内実を取り押さえ、ソクラテス以後の哲学(プラトン、アリストテレス、さらにはその後のストア派など)との影響関係を明確にし、その思索の歴史的な意義を考察することが、私の研究目標です。

ところで、そんな古い時代の人々の哲学を研究してどんな意味があるのかと思われるかもしれません。古代ギリシアの哲学者たちはさまざまな問題に取り組みました。存在とは何か、知識の源泉とは何か、「善き生」とはどのような生なのか、幸福とは何か、そもそも宇宙や世界とは私たちにとってどのようなものなのか  彼らが取り組んだこうした問題は、長い歴史をへていまだに決定的な解答を与えられてはいません。つねに問われ続けてきたこれらの問題は、そのまま今の私たちにとっても切実な問いとして開かれています。その意味で、哲学史の原点に立ち返って、彼らがどのような問題を立て、どのように論理を尽くして考え抜き、どのような答えを導き出したのかということを正確に把握することは、単に現代から古代を解釈することにとどまるものではなく、古代を通じて現代を理解することでもあると言えるのです。

とはいえ、プラトンやアリストテレスと違って、ソクラテス以前の哲学者たちが著した書物は、すでに早い段階で散逸してしまい、完全な形で残っているものは皆無です。つまり彼らの哲学は、後代の著作家たちによる断片的引用や間接証言によってしか、うかがい知ることができない状況なのです。したがって、わずかしか残されていない著作断片を元に彼らの思索を整合的に再構成して、その実質を見極めていく作業は、始めからピースの足りない(時には無関係なピースが紛れ込んだ)ジグソーパズルの組み立てにも似て、困難なものとなります。一歩間違うと描き出される全体像は歪んだものにしかなりません。しかし、そうした困難がともなうからこそ、ソクラテス以前の哲学の研究がいっそう魅力的で刺激に富むものとなっているのも事実なのです。

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