人間科学コース Human Sciences

中島 弘二 (NAKASHIMA Koji) 准教授

[研究領域] 人文地理学
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わたしは高校生のとき地理はあまり好きではなく、むしろ地学(ただし天文学は除く)が好きでした。ウェーゲナーの大陸移動説やプレートテクトニクス論など、よくわからないながらもわくわくしながら教科書を読んでいました。高校の先生に相談すると、「文系でも地理学なら地学に近いことを勉強できるんじゃないか」とアドバイスされて、大学では文学部の地理学を専攻分野として選びました。ところが入学してみるとその大学には自然地理学を専門とする先生はおらず、一時は大いに落胆しました。しかし生来それほど勉強熱心でもなかったので、流されるままに人文地理学を勉強するうちに、いつしかその研究を職業とすることになってしまいました。

地理学にもいろいろな視点や方法がありますが、わたしにとって地理学とはつねに自然と社会の関係について考える学問としてありました。それは天然資源の利用や土地利用、あるいは森林破壊や地球温暖化などの目に見える客観的な問題ばかりでなく、宗教や芸術、思想、イデオロギーなどの精神世界における自然と人間の関係という主観的な問題をも含む広範な問題領域を形成しています。その中でわたしが現在関心を持って研究を進めているのは以下の3つのテーマです。

まず一つ目は、日本という社会において自然はどのような対象としてとらえられてきたのか、そしてそのことが日本社会にとってどのような意味を持ってきたのかという問題です。こんな風に書くとまるで日本文化の風土論みたいに思われるかもしれませんが、わたしが関心があるのはむしろそうした風土論を批判的に読み解くことを通じて日本という国家や民族に回収されない自然と社会の多文化的な関係を模索することです。

二つ目はそうした問題について考えるうえでの理論的な枠組みの構築という課題です。具体的には「社会的自然social nature」という考え方を用いて、「自然−人工」、「伝統−近代」、「東洋−西洋」といった二分法的な価値観に基づく従来の自然観を批判的に乗り越える理論的な道筋を探究する仕事です。

そして三つ目が、こうした理論的枠組みを用いてこれからの自然と社会のより良い関係のあり方を目指すという課題です。「より良い」というのは漠然とした表現ですが、わたしが目指しているのは社会的正義に基づいた自然との関わり方の模索です。具体的には沖縄と大分をフィールドとして、米軍基地や自衛隊の演習場として支配された地域の自然を地元の人々が自分たちの手に取り戻そうとする草の根の運動にその手がかりを見いだそうとしています。

以上、わたしの研究の概略を紹介しましたが、具体的な研究活動においては必ずしも上記の3つのテーマに限らずできるだけ幅広く自然と社会の関係を考えていきたいと考えています。そうした柔軟さと間口の広さこそが地理学のよいところですから。

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