フィールド文化学コース Field Study of Cultures

西本 陽一 (NISHIMOTO Yoichi) 教授

[研究領域] 文化人類学
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私の主履修分野は文化人類学です。文化人類学とは、異文化の研究と理解をとおして、自文化を相対化しようとする学問で、当たり前と見がちなものを新たな視点から捉えなおし、よりよい社会のありかたを考えようとする試みです。具体的には、北タイの山地民族ラフ、タイの上座仏教、日本の仏教を具体的な研究対象としています。

タイ北部の山地少数民族ラフ族の社会と文化については、これまで10年あまり、長期フィールドワークをおこないながら研究してきました。タイのラフ族では、人口の少なからぬ部分がキリスト教徒となっています。また同時に、近代化のなかで、「昔のラフの本当のやり方」と呼ばれるものを守ろうとする伝統派の人びともいます。私は、ラフ族の社会と文化のなかでも、とくにこの宗教面について、キリスト教徒と伝統派それぞれの集団を調査し、比較研究してきました。この宗教研究においては、キリスト教徒と伝統派の人びとの宗教の違いや類似点のみならず、自らの国をもたない少数民族にとって、宗教がどんな意味をもち、「虐げられた人びと」の生活経験にどのように関わっているかという問題の理解をめざしています。つまり、キリスト教化や宗教復興運動は、近代化やグローバル化といった大きな時代潮流への、弱者による応答としてとらえることができるのです。

また私は、最近では、タイのラフ族での調査経験を足がかりに、中国雲南地方のラフ族の研究を始めつつあります(「国のない民は、どこにでも住める」とはあるラフ男性の言葉ですが、ラフ族はタイ、ビルマ(ミャンマー)、中国、ラオス、ベトナムの国境地帯にまたがって暮らしています)。同じ民族とはいえ、違った国家的な環境のなかでは、その社会と文化のあり方にも違いが出てきます。1949年の新中国成立以来、集団化、文化大革命、改革開放政策など、中国は大きな社会変化を経てきました。このような政治的な変化のなかで、少数民族ラフの人びとは、生活レベルでどんな経験をしてきたかという問題を考えています。

タイの上座仏教の研究では、タイ人の幸せはどこにあるかという問題を中心に考えています。タイ仏教では、出家者である僧が解脱のために修行する一方で、在家の民衆は、来世と現世の将来の幸福のために、寺院や僧に寄進するなど、せっせと功徳を積むことに励みます。人びとは自分の運命をそのまま受容れるのではなく、日々あらたな幸せのために、功徳を集積しようと努力しているのです。

これら外国の宗教を研究しているうちに、私は日本の宗教をふりかえって見直してみたくなりました。葬式仏教と呼ばれるように、日本の仏教は、死やご先祖さまと関わる面が強いですが、同時にそれは生きている人びとの幸福とどうつながっているか、考えてゆきたいと思っています。

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