歴史文化学コース History

能川 泰治 (NOGAWA Yasuharu) 教授

[研究領域] 特に都市を対象とする研究
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私の主履修分野は、日本近現代史です。具体的には、1900〜1920年代にかけての都市史研究に取り組んでいます。それでは都市史研究とは何なのか。説明の方法はいろいろあると思いますが、ここでは、これまでの私の研究履歴を振り返りながら、お話しすることにしましょう。

私が都市史研究を志すきっかけは、やはり大学4年生のときに取り組んだ、卒業研究にあったように思います。その頃大阪にいた私は、1918年に発生した米騒動に関心を持ち、大阪で起こった米騒動について卒業論文を書こうとしていました。それでは、なぜ米騒動に関心を持ったのか。最大の理由は、米騒動で発揮された民衆パワーについて、詳しく知りたいと思ったことにあります。軍閥内閣を総辞職に追いやり、代わって日本史上最初の本格的政党内閣を誕生させ、さらには普選運動をはじめとする様々な社会運動が活性化する契機となった米騒動について、なぜあのように大規模な騒動が起こったのか、民衆は騒動の渦中で何を思い、どんな行動をとったのか、詳しく知りたいと思ったのです。

ところで、米騒動の担い手については、富山県の漁村の主婦たちがあまりにも有名ですが、どこの地域でも漁師の主婦が騒動を起こしたわけではなく、他の地域で発生した騒動では必ずと言っていいほど、日雇人夫、人力車夫、職人・職工、労働者といった、底辺社会で暮らす人びとが騒動の担い手となっています。やがて、私の関心は、これらの人びとは、米騒動が起きる前にどんな生活をしていたのか、どんなことを考えながら生きていたのか、ということにシフトしていきました。その結果、大都市のスラムに集住する、これら底辺社会に生きる人びとの労働・生活の実態や、これらの人びとを担い手とする運動と暴動、そしてこれらの人びとの労働・生活に顕著なかたちであらわれる、都市の社会問題に対する行政の対応を明らかにすることが、現在に至るまでの私の研究課題になったのです。言うなれば、私の近代都市史研究は、都市という場で人はどのように生きたのかということを、明らかにしようとする研究であるということになるでしょう。

卒論を書いてから現在に至るまで、20年近い年月が経ちました。その間私は、1900〜1920年代のデモクラシー状況からファシズムへという時代の転換、そして帝国主義や大衆社会といった時代の全体像を見渡すマクロな分析と、都市という場で生きる人びとの労働・生活を考察するミクロの分析とをいかにうまくつなげるか、そういうことを念頭に置きながら研究を続けています。

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