人間科学コース Human Sciences

柴田 正良 (SHIBATA Masayoshi) 教授

[研究領域] 現代哲学(心の哲学、行為の哲学、等)
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(1)研究の目的とバックグラウンド

わたしたちの研究は、伝統的な哲学の問題形式から言うと、「心身問題」の探求ということになります。でも、われわれ人間の心についての研究は、実はいまや、人工知能や認知科学や脳科学といった現代科学が互いに連携しあって進めている<旬のもの>です。現代は、心の探求の真の幕開け、心の科学の新世紀なのです。古くからの「心身問題」を科学の新しい探究領域に変えたもの、それは一言でいえば、心もまた物質的宇宙の一部(つまり脳の活動の結果)だと理解しようとする自然化の徹底です。

(2)心の科学と哲学の往還

現在、わたしたちは、認知科学や哲学の文献を読むだけでは飽きたらず、人工知能学者やロボット工学者たちの助けを借りて、意味理解や感情の機能を人工的に実現する試みを行っています。数年前から継続的に科学研究費の援助を受け、これまでにも、<共感>という感情をシミュレーションするニューラル・ネットワーク群を作成してきました。ニューラル・ネットワークというのは、従来のコンピュータとは発想の異なる新しい人工知能の一つです。それは、これまでの「規則に従った記号変換方式」の代わりに、多数の小さな計算機(ノード)が同時並行的に興奮パターンを形成するような仕方で計算を行います。現時点では、わたしたちはこれをもう一歩進めて、ニューラル・ネットワークを搭載したロボットをリアルな環境の中で動かそうとしています。

(3)宇宙最大の謎へ向かって

しかし、心はいわゆる認知機能だけではありません。最も手強い問題は、たんなる物質の塊である脳が、いかにして感覚(クオリア)を生みだし、意識を生みだしているのか、ということです。われわれの宇宙と物理的には同一だけれども、意識や感覚がまったく存在しない宇宙を想像してみましょう。そのゾンビ宇宙は物理的に何の不都合もないように思われます。だとすれば、なぜわれわれの宇宙は、物理的現象に加えて意識や感覚を存在させているのでしょうか。 わたしたちの研究の最後の目標は、この宇宙最大の謎とも思われる難問に、何とかまともな答えを与えることなのです。その挑戦のほんのささやかな一歩は、拙書 『ロボットの心』(講談社現代新書 2001)からも知ることができます。

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