フィールド文化学コース Field Study of Cultures

菅原 裕文 (SUGAWARA Hirofumi) 准教授

[研究領域] ビザンティン美術史・キリスト教図像学
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ビザンティン帝国という今は滅亡してしまった国の美術、特に聖堂装飾について研究しています。ビザンティン帝国は古代ローマ帝国の東半分を領有していたので、その影響圏も広くトルコ、ギリシア、マケドニア、セルビア、コソヴォ、アルバニア、ブルガリア、キプロス、ロシアといった東地中海やバルカン半島の国々が私のフィールドとなります。日常生活では出不精でも、研究での行動範囲の広さとフットワークの軽さは今も自慢の種です。

私が近年取り組んでいるのはビザンティン聖堂の「儀礼化」という問題です。ビザンティンの聖堂は天井から床に至るまで壁一面が壁画で覆い尽くされています。「キリスト降誕」や「磔刑」といった個々の図像はもちろん固有の意味を持っています。それらが聖堂という三次元空間に何らかの意図を持って配列されたとき、隣接する図像や対置された図像と響き合って、新しい神学的な意味を生成します。こうした図像の配列から中世ビザンティン人の祈りや願いを読み解いていく手法を装飾プログラム論と言います。私は聖堂が絵画の展示場ではなく、典礼を通じて信者が神との一致を図る儀式の執行空間であるとの立脚点に立ち、図像と図像だけでなく、図像と儀式がどのように響き合うのかという問題に関心を持って研究を進めています。

儀式は演劇と同様に一回きりのものですから、当時どのような儀式を執り行っていたのかを正確に再現することは容易ではありません。ですから、私は日本にいる間、同時代人の残した神学関係の文献史料を通じて儀式の次第や象徴性を探ったり、聖堂に集う人々の動きに関する知識とイマジネーションを蓄えたりしています。そして、その知識を持ってフィールドに向かい、現存する聖堂装飾プログラムと照らし合わせるという手続きを踏んで研究しています。そうすることで、最近はビザンティン人の心と信仰のあり方にちょっと近づけたかなと実感しています。

こうした研究方法はいくら研究書を読み漁っても思いつかなかったでしょう。実際に現場に足を運び、聖堂の中で(恥ずかしいけれども)当時の儀式を真似してみて初めて到達したものです。美術史、そして我がフィールド文化学では、何よりも実物を見て触れること、現場で考えることが重要なのです。こうして私はカメラを相棒に、ザックを担いで、今日もフィールドに足を向けるのです。これを読んでいる君も、美術史に興味のある君も、一緒にどうですか。フィールドはきっと君たちにワクワクするような新しい世界をもたらしてくれるでしょう。

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