言語文化学コース Linguistics and Literature

竹内 義晴 (TAKEUCHI Yoshiharu) 教授

[研究領域] ドイツ語学、認知言語学、進化言語学
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言語学というのは「ことばの研究」だと思うから、身体のことを忘れてしまいがちです。

  • 「ことば」というのは、紙の上の断片のことですか?
  • その断片に写し取られた音声連鎖のことですか?
  • その音声連鎖が意味を伝える機能のことですか?

そう考えると、言語学は、言葉をつなぎ合わせる「きまりの学問」、複雑な活用や助動詞を覚える暗記科目に思えてしまうのです。そう思ってしまう時、文法の規則やイディオムをひけらかす優等生の得意顔を思い出してしまいます。「ああいうものにだけはなりたくない!」と心に誓った少年時代を思い出します。ああいう「ふしぎをいだかない者」になってはいけないのです。

「ふしぎ」を心に持ちましょう。ことばというものを私たち人間だけがどうして使いこなせるのでしょうか。

私たちの口、鼻、声帯や肺、横隔膜、それを制御する神経系がうまくできているから、私たちは音声を使いこなせるのです。ことばが私たちの考えを伝えるのに便利なのは、どこがどうなっているからなのでしょうか。

人間よりもチンパンジーの方が、面に与えられた情報を一瞥して見てとることが得意です。人間は、面を一度に見るのではなく、どうしても時系列を追って見てしまうのです。このように認知される情報は、時系列上に記号を並べる言語記号に写し取るためには、うまい構造化がされているといえます。私たちがチンパンジーのように、パッと見てとることが得意だったとしたら、私たちは言語を使う動物にはならなかったかもしれません。

人類は森からサバンナに出て、採集生活から狩猟生活に切り替わることで認知のニッチに入ったサルです。広く見通しのよいサバンナでは、パッと一目で情報を読み取る認知の仕方では、狩猟に充分な情報は取れないかもしれません。私たちは、外界を認知する目や神経系という身体基盤を特殊に進化させた結果、言語を使う動物になったのです。

認知言語学は、身体の基盤から、言語のふしぎに取り組む科学です。私はドイツ語学が専門ですが、ドイツ語もまた、そのような観点からみると、面白いことがいっぱいです。

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