言語文化学コース Linguistics and Literature

入江 浩司 (IRIE Koji) 教授

[研究領域] アイスランド語学、言語学
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私はアイスランド語の研究を専門にしています。アイスランド語は、英語やドイツ語などと同じ「ゲルマン系」と呼ばれる言語の仲間で、北大西洋の北極圏すれすれに位置する孤島アイスランドで、30万人ほどの人々によって話されています。9世紀の終わり頃、ノルウェーのあたりから海を渡っていったバイキングの子孫の言語です。どのようにして私がこの言語にたどりついたか、少しお話ししてみましょう。

私は大学に入って最初の頃、ドイツ語を専門に勉強していました。しかし他の言語にも興味があり、ギリシャ語やラテン語といった西洋古典語や、学年が進んで中世のドイツ語などを学ぶうち、ヨーロッパの古い言語に特に強く関心をもつようになりました。西洋の言語では大きな流れとして、古代から中世を経て現代へと時代が移るにつれ、語形変化が単純化する方向へ推移しており、一般に古い言語ほど語形変化が複雑であるという特徴があります。言語のタイプが変化してきていると考えてもよいでしょう。おぼろげながらそんなイメージがつかめてきた頃、たまたま大学図書館でアイスランド語の文法書を手にし、その複雑な語形変化の表を見て、古代や中世の言語そのままの姿ではないか!と驚き、しかもその言語が今でも生きて話されていることを知り、大きな興味をそそられました。大学の視聴覚室には、英語で書かれたカセットテープつきの教材もあることを知り、ひどく音質の悪い機械で聞かせてもらった録音で、「蓄音機」などという語彙が出てくるテキストの音声を聞き、これがアイスランド語の響きなのか、と感動を覚えました。

その頃はアイスランドに関して日本で手に入る情報などほとんどありませんでした。いろいろ珍しいツアーの企画をしていたある旅行会社のパンフレットでは、アイスランドが「北欧」の分類ではなく、「南極」と同じカテゴリーに入っているのを見て呆然としたこともあります。しかし大学院生の時には、念願かなってアイスランドに留学する機会にも恵まれました。時代は急速に変わり、今ではインターネットを通じて新聞・放送をはじめ、さまざまな現地の情報をリアルタイムで得られるようになりました。

私はこれまで、主に再帰動詞と所有表現という二つのテーマについて、現在話されているアイスランド語の文法を研究してきました。再帰動詞というのは、「自分」という代名詞との組み合わせで用いられる一群の動詞です。所有表現はアイスランド語ではなかなか複雑で、例えば「私の手」「私の目」「私の本」の、「私の」の部分にそれぞれ異なる表現手段がとられます。上述のようにアイスランド語は現在でも古い言語の姿をよく保っている言語ですが、やはり言語の変化はあります。アイスランドには12、13世紀を中心に散文で書かれた文献が大量に残っており、最近では、そうした中世のテクストの言語の文法との比較も視野に入れて研究を進めています。

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