フィールド文化学コース Field Study of Cultures

足立 拓朗 (ADACHI Takuro) 教授

[研究領域] 西アジア考古学
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西アジアの考古学を研究することには多くの意義がありますが、私は以下の6つを中心に研究を進めています。それは、「ホモ・サピエンスの拡散」、「食糧生産の起源」、「国家の起源」、「帝国の起源」、「一神教の起源」、「遊牧民の起源」、となります。このように西アジアは人類史上の様々な起源問題を考える上で重要なフィールドと言えます。

学生時代は、シリアを中心に食糧生産の起源に重点を置いて研究していましたが、博物館に就職した頃から、帝国の起源の研究をする機会が増えていきました。その後、30代後半のイラン調査がきっかけで、遊牧民の考古学研究にも関わるようになり、40代以降はヨルダンやサウジアラビアで遊牧民の遺した遺跡が調査・研究の主体となっています。

現在は、遊牧民の起源が最も関心のあるテーマとなっていますが、上記の6つの意義を考えながら研究を進めています。以下に、この6つの意義について簡単に説明します。

(ホモ・サピエンスの拡散)

現在、私たち人類、ホモ・サピエンスはアフリカで約20万年前に登場したことがわかっています。なぜ、私たちはアフリカを離れ、世界各地に拡散したのか?この問題を考えるには、アフリカに接する西アジアで調査する必要があります。

(食糧生産の起源)

長い間、人類は狩猟・採集をして暮らしていました。約11,000年前に西アジアでムギ農耕やヒツジ牧畜が始まりました。なぜ、人類は食糧を「生産」することを始めたのか?西アジアでは人類最古の農耕・牧畜を研究することができます。

(国家の起源)

最古の国家ができたのも西アジアだと考えられています。同じ時期に最古の文字も発明されています。

(帝国の起源)

私は多言語(民族)国家を帝国と定義していますが、広大な領域を有する国家と考えてもかまいません。このような広域国家が初めて誕生したのも西アジアです。

(一神教の起源)

ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教といった一神教の起源地も西アジアになります。

(遊牧民の起源)

遊牧民は季節的に高地と低地の移動を繰り返します。ただ、移動しているだけではなく様々な物資や情報をお互いに交換し合いながら移動したと考えられます。この物資や情報の流れが定住している都市民や農民にも大きな影響を与え、西アジアの文明を発展させたと考えています。

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